アシナガバチの毒は、私たちに強い痛みと腫れをもたらしますが、その強さは他の蜂と比較してどうなのでしょうか。一般的に、蜂の毒の危険性は、毒そのものの成分の強さ(毒性)と、一度に注入される毒の量によって決まります。この二つの観点から見ると、アシナガバチの毒の位置づけがより明確になります。まず、毒性の強さという点では、アシナガバチの毒はスズメバチの毒に匹敵する、あるいはそれ以上に強力な成分を含んでいると言われています。特に、神経に作用して激しい痛みを引き起こすアミン類やペプチドの含有率が高く、刺された瞬間の痛みは非常に強いものがあります。しかし、実際の危険度でアシナガバチがスズメバチほど恐れられていないのには理由があります。それは、一度に注入される毒の量が大きく異なるからです。アシナガバチはスズメバチに比べて体格が小さく、毒嚢も小さいため、一回の刺傷で注入する毒の量はごくわずかです。一方、大型のオオスズメバチなどは、その大きな体で大量の毒液を注入することができます。したがって、一回刺された場合の体へのダメージは、スズメバチの方がはるかに大きくなる傾向があります。ミツバチと比較すると、状況は少し異なります。ミツバチの毒は、毒性自体はアシナガバチやスズメバチに比べて弱いとされています。しかし、ミツバチの針には「かえし」がついており、一度刺すと針が皮膚から抜けず、毒嚢ごと体内に残ります。これにより、毒嚢が収縮を続けて毒液を全て注入するため、結果的に多くの毒が体内に入ることになります。対照的に、アシナガバチの針にはかえしがなく、何度も刺すことが可能です。この性質は、一匹の蜂に繰り返し攻撃される危険性を示唆しています。結論として、アシナガバチの毒は、成分自体は非常に強力ですが、一回あたりの注入量が少ないため、スズメバチに比べれば危険度は低いと言えます。しかし、アナフィラキシーショックを引き起こす力は十分にあり、決して侮ってはいけない存在であることに変わりはありません。
アシナガバチの毒は本当に強いのか?