ゴキブリの赤ちゃんが一匹でも見つかったら、その元凶である「卵」の存在を疑わなければなりません。ゴキブリの卵は、私たちが想像するような小さな粒状ではなく、「卵鞘(らんしょう)」と呼ばれる、非常に特徴的な形をしたカプセルの中に納められています。この卵鞘の正体を知り、それを見つけ出して処理することこそが、ゴキブリの繁殖サイクルを根本から断ち切るための最も重要なステップです。卵鞘は、種類によって形や大きさが異なりますが、一般的には小豆や黒豆に似た、長さ5〜10ミリ程度の硬いカプセルです。色は茶褐色から黒褐色で、表面には光沢があり、がま口財布のような独特の形状をしています。クロゴキブリの場合、この一つの卵鞘の中に約20〜28個の卵が、チャバネゴキブリの場合は約30〜40個もの卵が、整然と並んで収められています。この硬い殻は、乾燥や物理的な衝撃、さらには殺虫剤からも内部の卵を守る、天然のシェルターの役割を果たしています。そのため、通常の殺虫スプレーを吹きかけただけでは、卵鞘の中の卵を死滅させることは非常に困難です。メスのゴキブリは、この卵鞘を産む際、孵化した幼虫が生き残りやすいよう、安全で餌や水が豊富な場所を慎重に選びます。キッチンの引き出しの奥、冷蔵庫の裏、シンクの下、家具の隙間、段ボールの溝などが、主な産卵場所です。もし、これらの場所で卵鞘らしきものを見つけたら、絶対に掃除機で吸い込んだり、潰したりしてはいけません。中で卵が孵化したり、潰した衝撃で卵が飛び散ったりする危険性があります。最も確実な処理方法は、ビニール袋を使った物理的な破壊と密閉です。ティッシュなどで拾い上げた卵鞘をビニール袋に入れ、袋の上から靴で踏みつけるなどして、中身を完全に破壊します。その後、袋の口を固く縛って可燃ゴミとして捨ててください。この少し気味の悪い作業をためらわないことが、未来の数十匹のゴキブリの誕生を防ぐ、何よりの対策となるのです。